あと8日、菊水山駅。

撮影の後は、9時に神戸駅前でDと待ち合わせて今月26日限りで休止になる神戸電鉄菊水山駅を訪問する事に。

神戸駅で待ち合わせなので高速神戸駅から電車に乗ればいいのですが、たかだか1km程度の距離だけ電車に乗って神戸高速鉄道に金を貢ぐのも癪なので神戸電鉄の名義上の始点駅・湊川駅まで徒歩移動。

大倉山まで上がり、西に折れて暫く歩くと何やらアングラっぽい地下道への入口があります。そこが湊川駅。
改札をくぐり、小さな薄暗いホームで菊水山に停車する電車を待ちます。菊水山駅は普通電車でも殆どの電車が通過し、神戸市内なのにもかかわらず停車する電車は一日に10本少々のみ。

やがて到着した電車は、神鉄では最も新しい車両となる5000系の鈴蘭台行き。
折角なので、一番先頭で前面展望を望むことに。

地下駅の湊川駅を発車後、すぐに勾配を登って地上へ。しばらく掘割区間を走った後、やはり急な上り坂で高度を稼いでいきます。すぐに長田。

線路は六甲山にへばりつくような形で敷かれており、右へ左へと急カーブを描きながら走っていきます。「よじ登っていく」と云う形容がぴったりマッチしているような路線。

駅を出発してすぐに立ちはだかる連続50パーミル勾配をものともせず、全M車の強力編成で組成された神戸電鉄の車両はグイグイと力強く登っていきます。まさに登山電車。
50パーミルといえば、自転車や自動車にとってもかなりの坂道。それを鉄軌道で登っていくのですから、並大抵のものではありません。そこらのJRを走っているような普通の車両では、こんな坂道を登ることはまず不可能です。
しかもこの路線の位置づけは観光路線ではなく、都市近郊の通勤路線。ラッシュ時ともなれば、電車が3,4分間隔で次から次へとこの坂道を上り下りしているのですから驚きです。

トンネルと急勾配、急カーブの連続する線路はスリル満点。湊川から僅か9分、電車は菊水山駅に到着しました。辺りはすっかり山の中、一面の緑です。
降り立ったのは私たちの他に、一人の老人のみ。その老人も、何時の間にかどこかへと消えていきました。天狗?


ここ菊水山駅の近くに民家などはなく、利用客は僅かなハイキング客(・・・と、鉄ヲタ)のみという状態。そのため利用客は著しく少なく、ついに3/26のダイヤ改正で休止が決定したという訳なのです。
あえて「廃止」ではなく「休止」となっている理由は、廃止扱いにすると駅の構造物を撤去しなければならないのですが、立地条件上撤去することが不可能だからだとか。

着いてから暫くの間は撮影に興じます。まずは記録から。


数本の列車を駅と絡めて撮った後、ベンチに駅ノートを発見。
コンスタントにほぼ毎日書き込みがあることに感心しつつ、自分も数行書き込み。併せて下手な絵もさらっと描いたので、結局ほぼ1ページ使うことになりました。下手な絵で激しくページの無駄遣いをしたことをここにお詫びします。


しかし、それにしても心の落ち着く駅です。とても神戸の中心から電車で10分弱の距離にあるとは思えません。
どこからかホトトギスの鳴き声が聞こえてきます。時折曇ることもありましたが、春らしい陽気をはらんだ太陽が心地よい程度に照りつけてきて実に長閑。

時折通過する電車も、様々な車種があって飽きが来ることがありません。


11:36、新開地行きの電車が到着。
先ほど11:13に到着した鈴蘭台行きから降りてきた二組の客で不意にちょっとした賑わいを呈していたここ菊水山ですが、皆がこの列車で折り返していきました。

私と連れを置いて、電車は菊水山駅を後にしていきました。

次の新開地行きの列車は、何と16:50まで存在しません。神戸市内であるのにもかかわらず、実に5時間以上もの間電車が無いのです。


その電車を待つわけもなく、名残惜しいながらも12時頃に徒歩でこの駅を離れることにしました。
駅から下に続く石段を下り、生い茂る木々の中を歩いていきます。


やがて舗装された道路へと出ます。そのまま道なりに歩いていきます。

この辺りは神戸市の水道関係の施設が点在し、所々に突如怪しげな施設が立っているのが特徴的です。民家も僅かながらあるようで、急坂急カーブ、道幅3mのワインディングロードを郵便局の赤いバイクに跨ったオッチャンが手紙片手にぶっ飛ばしていきます。正直、あれにはちょっと漢気を感じました。イカすぜオッチャン。

下には綺麗な川が流れています。時折降りて水と戯れつつ、山道の中を進んでいきます。


この辺りの地理には疎いので、Dが道案内を勤めてくれます。やがて今まで歩いてきた道は、貯水池らしき茫漠とした空間脇を通るようになります。貯水池といっても全く水はなく、荒地の風情。

ホトトギスの鳴く声が方々から聞こえてきます。ふと藪の中に目を凝らすと、確かに数羽のホトトギスが確認できました。シルエットはスズメのようですが、あの鮮やかで特徴的な色ですぐに違うと分かります。

歩道の手すり上に留っているホトトギスも。カメラを向けても、ほとんど逃げる気配がありません。


そのまま歩いていくと、ダムの上に出ます。この貯水池に水が貯まっていた時には使われていたのでしょうか、相当の年代モノの模様。石碑に刻まれていたのは「1900」の数字、もう100年以上前の建築のようです。19世紀から21世紀、ひたすら神戸市を守り続けてきたこのダム。今でこそほとんど稼動機会はなくなりましたが、山奥でひっそりと市を水害から防ぐ大役を担っていることに変わりはありません。


更に階段を降りて歩いていくと、道は見知らぬ集落へと繋がっていました。この辺りは何度か来たことがあるというDも知らない様子。
とりあえず下へと進んでいくと、急に目の前にカーブした切通しが現れます。
両側の高さは5m以上、それらの間に薄暗い道が続いています。

その切通しのカーブを曲がっていくと、突如目の前に神戸市街の全景が広がりました。
眼下に段々畑状に広がる家並。遥か向こうにはポートタワー、神戸市役所のビル。海も見えます。

思いがけず出会えた雄大な景色に、暫し立ち止まります。こんな所があったなんて・・・。

尾道をも思わせるような雰囲気の坂を下り、道路沿いに歩いていくと、何時の間にか大倉山へと戻ってきていました。
神戸といえば「坂」。その雰囲気を片鱗ながらも味わえたのではないでしょうか。


その後はJR神戸駅からJR元町駅へと繋がるガード下、所謂「モトコウ」を物色しながら元町へ。色々といい感じの店が多く、欲しい服も結構あったんですが財布の中身と相談して断念。また今度買いに行くことに、ってことで・・・。安い割にいい感じのものが揃ってるんですよね、あそこ。

最後はジュンク堂、と思いきやセンタービルに撃沈。・・・え、誰も3Fなんていってm(ry


結局、最終的には菊水山から三宮まで延々歩いたということになりました。

疲れましたが、得られたものはなかなか多くて良かったですよー。