神様、仏様、出雲様

旅行記2日目>

一瞬、はっと目が覚めました。どこかに停まっている模様。

そういえば三ノ宮発車時にウテシさんが「加西SAで休憩をとる」とか云ってたので、多分そこなのでしょう。数秒で再び、眠りの淵に落ちていきます。


次に目が覚めたのはどこか山の中。雪まみれの山中、闇の中で激しく曲がりくねったカーブを次々と曲がっていくバス。
夢なのかそうでないのか分からないような微妙な感触を覚えつつ、また記憶が遠のきます。


最後のお目覚めは鳥取到着寸前。時計を見るとAM1:20、ほぼ定時です。

山間部の道路ではチェーン規制が敷かれていて、その影響で結構遅れるのではないかと踏んでいたのですが、そうでもなかった様子。


上着を着込んでバスのステップを下りると、待ち受けていたのはピンと張りつめた北国の空気と、足にズボッとくる新雪を押しつぶしたときのあの感触。駅前広場はもはや真っ白。


長い運転を終えたバスのウテシさんは、倉吉まであと一息の運転に備えて小休止。三脚組の方々と、出雲の話をしていました。

「ああ、出雲ねぇ。泊と松崎の間とか凄いでしょ〜」。流石、よく見ていらっしゃいます。


ウテシさんが運転席に居なかった&三脚出すのだるかった&客が車内に残ってなかったのでフラッシュ撮影。


駅コンコースがまだ空いてたので、一緒のバスに乗っていた方々と中に入り、そこにあった「出雲」の惜別パネル展の写真を肴に話が弾ん・・・だのも束の間。間もなく駅員がやって来て、「閉めますよー」とのこと。
どうやら、コンコースは1:30〜3:30までの間封鎖だとか。まぁ、そんなことは想定の範囲内


只今の気温、マイナス3度。この気温だと屋外で一箇所にとどまってなどいようものならリアルに死にかねないので、暇ということもあってひたすら深夜の鳥取市内を歩き回ることに。どうみても不良です。本当にありがとうございました。


色々と時間を潰して3時前に一軒のローソンに辿り着くと、そこにはちょうどたった今搬入されてきたばかりの今日発売のマガジンとサンデー。そして店員のお姉さんは私の心を察してくれたのか、何とそれらを速攻で陳列してくれるではないですか。GJ!


そんなこんなで、結果的にここでかなり時間が潰れました。3時半、駅のコンコースが開くのを待って入場。同じことを考えている同業諸氏が、ボツボツと入ってきて方々の柱の根元や壁際に座り込みます。何やら異質な光景ですが、私もその光景を構成しているうちの一人であることに変わりはありません。


3:57、不意に上でベルが鳴り響きました。始発の快速列車がホームに入ってくるようです。撮影スポットが快速の停車駅となる同業者はここで立ち上がり、ホームに向かっていきました。健闘を祈ります。

普通しか停まらない泊が撮影地最寄の私はその後もひたすら曲を聴いて寒さを紛らわせ、4時半頃に18切符に日付を入れてもらって入場。


コンクリートの無機質なホームに立つと、容赦なく寒さが襲ってきます。先ほどまでは動き回っていたので余り寒さを感じませんでしたが、やはりマイナス3度・放射冷却の威力は絶大です。体力奪われまくり。


やがて4時も50分に近づこうかといった頃、米子方から2灯のライトがこちらへ近づいてきました。ホームの蛍光灯に照らされつつ進入してくる、オレンジ色の2両の気動車


車内は仄かに暖かく、生き返るような心地です。さっきローソンでマガジン立ち読みのお礼に買ったカリカリモフモフで体力も回復。


そして列車は、ゆっくりと米子へ向けて走り出しました。寒い中3時間過ごし抜いた鳥取駅の灯が、後ろへ過ぎていきます。


夜が明ける気配のない闇の中を走り抜ける、2両のディーゼルカー。乗客は減りもせず、増えもせず。停車と発車を繰り返し、暗い中をただひたすら、淡々と走っていきます。


土色に汚れた窓から外を見ると、数時間前にバスの車内から見たのと同じ月が。しかし、その月が見えているのは車窓の斜め下。え、下?

どうやら列車は海沿いを走っているらしく、眼下の水面が鏡となって空に浮かぶ月を映しているようです。上を見上げると、成る程確かにもう一つの月が煌々ときらめいていました。


時折不意に襲ってくる眠気に耐えていると、いつしか列車は青谷を発車。いよいよ次が泊です。


先頭しか扉の開かないワンマン運転なので、停車前に先頭車へ移動。この車両はもはや鉄ヲタ輸送車両と化し、一般の方々は一人か二人ほど。さっきのバスに続き、これもまた凄い列車です。

そしてその鉄ヲタのほとんどがここ泊で下りていくのですから、これまた滑稽です。結局、私と一緒に下りたのは10人ほどだったでしょうか。


一人だけ、走って撮影地に向かう方の姿も。ただしかし残念ながら、最早自動車マルヨ軍団の手にかかってマトモな場所なんて無いと思うです。


そんな方の後を追いつつ、途中コンビニで先に着いているお二人への差し入れを買ったりしながら歩くこと20分強。駐車中の撮影隊車のハザードランプが点灯してるため、場所はすぐ分かりました。


ああ、この踏切らへんね・・・って、何事ですかコレは一体。


そこにあったのは三脚の林・・・いや、森。ジャングル。

俯瞰気味、下気味、正面、インカーブ、アウトカーブ、サイドとかなり多彩な撮り方が楽しめるこの撮影地なのですが、それら全ての位置に既に何十本もの三脚がセットされています。うわー(棒読み)。


と、そこへ「師匠、師匠」との声が。声の主はid:negimadoka58さんとid:cassiopeiaさん。・・・いや、ってかここまで来てマスターですかw


声のするほうに振り向いてみると・・・な、この三脚軍団の最前列ですとぉ!?

いやぁ、本当に凄い方々です。こんな私のための場所まで確保してくださって、本当にありがとうございます(感涙)


先ほどまで真っ暗だった空は、東から段々ピンク色がかってきました。時刻は6時前、夜明けは近いです。

そしてだんだんと、辺りが明るくなってきました。


気温はまだマイナス、列車は雪を巻き上げながら疾走してきます。



先ずはこういった暗いときの常套手段、流しっ!

微妙に流せてないのは気にしない。「境港行き」という、何ともビミョーな行き先です。



さぁ、撮っているうちにどんどん太陽が昇ってきました。


雪煙を猛烈に撒き散らしながら通過していったキハ47の普通は、全て国鉄首都圏色で揃った堂々5連!ここまで繋がると、流石に凄い貫禄です。



とっとりライナーはキハ126の2連。さっきの堂々5連の後だと、なんか妙に見劣りが・・・。

因みにこのとき、このステンレス製の銀色車両にはめでたく「銀様」という愛称がつきました。


8時を過ぎ、ようやく雪煙も収まってきました。またやって来たキハ47はやはり国鉄色で統一された4連、こんなのばかり来るようでは出雲の前に腹が膨れてきそうです。



そしていよいよ、運命の瞬間が近づいてきました。

鳥取805発・倉吉842着の出雲は、定時だとここを大体833ごろ通過。時刻、今まさに830。


周囲に、先ほどまでには無かった緊張が走ります。無言の一群。


・・・が、そのとき。先ほどまで「赤」、つまり向こうに列車があることを示す信号が「黄」、即ち「注意」になりました。へ?


ほどなく、高速で鳥取方へ向けて走り抜けていくスーパーはくと。続いてキハ126も。

居合わせた百人近い一同、これで緊張の糸がほぐれて一斉に苦笑い。どうやら出雲は遅れている模様。


すかさず携帯で2chの出雲スレをチェキしてみると、鳥取到着前の時点で20分遅れとのこと。となると、あと10分は来れない計算です。ふぅ、ちょっと一息・・・。


が、そんな余裕は一瞬に感じられるほど速く過ぎるわけで。



鳴り出す踏切。


泊場内信号は赤。下り列車接近の証拠。


やがてカーブの向こうから顔を出したのは、赤い機関車。ヘッドマーク


そして後ろに連なる、長い長い12両の客車。





空は青く、地面は白く。絶好の雪晴れの中、出雲はただ滑るように通過していきました。


12両もの長い編成が、目の前を一両また一両と過ぎていきます。ピカピカのDD51-1179、電源車、A寝台、Bハネ、オシ・・・。

編成が完全に過ぎ去ったあと、私は何故か周囲の撮影隊の方々と固く握手。

もし今このまま昇天しちゃっても思い残す事とかありませんから。


今だかつて、これほどまでに撮影で緊張したことは無かったかと思います。それほど、気合が入っていました。



撮り終えて三脚や下に敷いていた新聞紙などの機材を撤収。そんなところにまたもキハ47×5連が通過、華麗に失敗しましたが最早そんなこと気にするわけがありません。


そして泊駅へ。つい4時間前に真っ暗な中を歩いた時と全く違った様相を見せている道路が何とも。


駅に着いて列車を待つも、20分遅れの出雲が単線の山陰本線のダイヤを掻き回しつつ走り抜けていった影響で、私達の乗る普通も5分強ほどの遅れ。


この写真だけ見たら「これ、どこの釧網本線?」な感じに見えなくもないような。撮影地は凄い事になっていましたが、最寄り駅は長閑なものでした。



コイツに乗り、行き違い待ちで伸びたり長時間停車短縮で縮んだりでしょっちゅう変化する遅れにヒヤヒヤしながら西へと向かいます。
駅間距離がそれなりにあるため、このあたりの普通列車はかなり飛ばします。このキハ47も例に漏れず、高速化改良でカーブ最高速度向上などの改善がなされた山陰本線を飛ばすわ飛ばすわ。とてもポンコツ国鉄気動車とは思えないような、素晴らしい走りっぷりです。


日本海に向かって立ち並ぶ風車群を横に見つつ走り、伯耆大山着。伯備線方面へ向かう私とcassiopeiaさんはここで乗り換えです。円さんは今日の上り出雲にヒルネ乗車するため、このまま出雲市へ向かわれるとか。お疲れ様です。

・・・もう皆さん頑張りすぎです。まぁ、私も人のこと云えないんですけど。


数分の乗り継ぎで乗り移った列車は、米子発岡山行きというなかなかの長距離ロングラン運用。

美しく雪化粧した大山を進行方向左に望みつつ、電車はだんだんと中国山地へと分け入っていきます。
途中、上石見では下りスーパーやくもとの交換・上りスーパーやくもの追い抜きが同時に行われ、こんな一コマも。

実は地味にコイツも今改正で全部「やくも」に統一されて消滅なんですよね。


県境の山越え区間ではかなり激しい勢いで爆睡してしまい、気付いた時には新見到着寸前でした。


新見からは姫新線・・・なのですが、ここでアクシデント。携帯が見つかりません。
慌ててウテシさんにその旨を告げ、無線で連絡してもらった・・・のですが、その矢先に上着の内ポケットから発見されるという大失態。コレはどうも、最近流行っているものとは違う方向で始末書を書くことになりそうです。。。

とにかく、あの折はお騒がせ致しました。陳謝。


気を取り直して再開。一両きりのキハ120は山間の細道を、コトコトと走っていきます。

乗客はやはり18ユーザー多め。かといって地元客は少ない訳でもなく、意外に乗っている区間も。

行き違い設備が撤去された跡が伺える駅も数多く、一昔前の隆盛が偲ばれます。時折車窓をよぎるコンクリートの巨大建造物は中国自動車道。明と暗、という奴でしょうか。


途中変な酔っ払い爺さんの襲撃を受けて車内が冷めた視線と笑いに包まれるハプニングがありつつも、無事に津山到着。

今まで乗ってきた列車のウテシさんに「これからどこ行くの〜?」と聞かれ、一瞬悩んだもののとりあえず「姫新線にこのまま乗って大阪へ抜けます」と。流石に「東京へ出雲云々」と云うのもアレですし。


未乗の津山⇔東津山を往復するというcassiopeiaさんと一旦お別れし、私は近くの踏み切りで急行「つやま」を撮影。


あまり影の向きが宜しくなかったので、正面がちに縦位置で撮影。この手の構図、嫌いじゃないです。


これを撮った後は再び5分くらい歩いて津山駅へ戻り、佐用行きの普通待ち。乗車位置で待っていると、東津山まで行っていたcassiopeiaさんが因美線の列車で帰ってきました。

そしてほどなく、佐用行きのキハ120が単行で夕刻のホームに到着します。このあと津山線で岡山へ抜け、総社線や赤穂線を潰す・・・というcassiopeiaさんとはここでお別れ。今日は一日、ありがとうございました。


斜陽を浴びながら、キハ120は再び山間を走り出します。銀色のボディにオレンジ色の陽光を反射させながら、一両きりでゴトゴトと。


途中駅の木造駅舎には未だにタブレット時代の遺構が残っていたりと、姫新線のこちら側も良く言えばノスタルジーな、悪く言えば時代に取り残された香りがやはり随所に漂っています。


それでもここまで来ると、かなり関西に近づいてきた印象。


出席番号1番、以下説明略。実は個人的にかなりツボキャラだったりします。


ここからは対向ホームに停車中の姫路行きキハ40に乗り込み、「キシャ通」の中学生らと共にまだまだ姫新線の旅は続きます。

姫路近郊では通勤通学輸送の需要もかなり多い姫新線。最終的にはかなりの盛況っぷりで、すっかり闇に染まった姫路駅に到着しました。


七味唐辛子を一杯にぶちこんだえきそばを啜りこんだあと、始発の新快速に乗り込みます。

コンセント充電可能席を確保し、颯爽とデジカメの充電を開始。大阪から合流予定のジークさんにメールを送るも、走り出してほどなく私は夢の国へ突入。


不意に目が覚めます。んー、結構寝れたなぁ・・・・・・で・・・ここ、どこ?


すかさず寝起きで思うように回らない頭を動かし、ドア上のLEDに目を向けます。そこに浮かぶは「次は 大津 」の4文字。左様ですか、私は姫路から滋賀県までブッチギリで睡眠ですか。


携帯を見ると、ジークさんからはメールの他に着信まで入っている始末。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

どうやら同じ列車に乗っておられるようなので、野洲で合流することに。そして私はまさかの再度おやすみう(ry。いや、まぁ、何せ、昨晩なんて30分しか寝てないですし。


そして新快速は快調に夜闇の中をかっ飛ばし、気付けば終点の野洲。なんとか無事に合流も成功し、一本あとの米原行き新快速でまだまだ東進は続きます。


雪の残る中223系8連→313系4連の米原ダッシュを制し、大垣までは快適着席移動。


すっかり毎度お馴染みとなった駅北のサンクスで飲み物を補給し、ながらに乗り込みます。今日はいつもより少し早め、23:15頃の入線。

いつも思うことなのですが、ムーンライトながら到着前の大垣駅の持つ独特の雰囲気が好きなのです。なんとなく浮き足立っているというか、希望に満ちているというか、そんな感じ。まぁ、これは関西に住んでいる者ならではの感情なのかもしれませんけど。


さて、いつものようにMLながら大垣駅定刻発車。闇夜の中を、東に向かってひたすら突き進んでいきます。


名古屋を過ぎた辺りで強烈な眠気に襲われ、あえなくダウン。月夜のもと、大勢の18ユーザーを満載した列車は4灯の煌めくヘッドライトを頼りに東京への300km余りを着々と駆け抜けていくのでした。


<3日目につづく>