日本海上に浮かぶすじ状の雲。

餘部


↑今シーズンはコイツが出まくりで日本海岸はもうえらいこっちゃなわけですが、スキーを滑る分と鉄道写真をカッコ良く撮る分に関して云えば、この降雪と云う気象条件は実にプラスに働いてくれるわけです。


というわけで今朝は6時起床。窓を開けたらそこは吹雪でした。げふぅ。

出雲?どうせ遅れてるんじゃねぇの?・・・と思いつつ2chのスレをチェックすると、予想に反して定時運転。あー分かりました、要はこの猛吹雪の中出撃すりゃいいんですね。無茶言わないで下さい。


というわけでまだ夜の明けやらぬ6時45分、出雲を撮りに線路脇へ出撃。足元は昨晩から降り始めた雪で一面真っ白、雪は更に降り続いて止む気配なんてありません。気温は氷点下なので雪は融けることもなく、ひたすら降り積もり続けます。


その雪のせいで、当然ながら露出も撮影状況も最悪そのもの。どうあがいても1/15しか切れません、本当にありがとうございました。カメラは当然ながら雪まみれ、手入れが大変そう。

それでもまぁ、方策的には色々とあるわけで。この「出雲」という列車に関しては私は今までにかなりの枚数を撮ってきているので、今更慌てて葬式鉄している方とは異なり、結構色々な構図に挑戦することも出来たりします。いいことです。


ってわけで、俯瞰気味に流し!

・・・の割には完全に追いきれてませんが、荒れ狂う吹雪の中を突き進む様子が撮れたんで、個人的にはもう悔いはありません。


吹雪の中をいつもの倍ほどかけて歩き、一旦家に帰って食糧補給してから撮影に再参戦。



8時半頃の列車に乗り込み、移動開始。目指す場所は、勿論あそこしかありません。


昨日とは打って変わって一面の銀世界の中を、2両編成の赤いディーゼルカーは快調に走ります。山をトンネルで突き抜け、漁港をかすめ、川を渡り、荒れ狂う海を望み、そして・・・




やってきました余部鉄橋。明治末期に建設されたこの橋梁、高さ約40m・幅は300m。完成当時は「東洋一の大鉄橋」と言われ・・・と、私はこんなどこぞのバスガイドみたいな説明がしたいのではありません。


鉄骨を組んでその上に桁を通しただけのこの鉄橋は、100年も昔から風雪にひたすら耐えてきました。この無骨さ、巨大さ。まさしく機能美とはこのことです。



普段は赤い鉄橋も、今日のような雪の日は白化粧。凍てつくような寒さの中、どっしりとその威容を谷に誇っています。


実家がここから列車で数駅と、「準地元民」の私。帰省のときは大抵一度はここに来るのですが、ここまで綺麗に雪化粧した姿など初めてです。

後で聞いた話ですが、お立ち台で撮影していた超常連の方曰く、「雪が降るときは大抵風が吹くから、列車が止まる。こんな条件そんなにないよ」「今日?あぁ、(風量規制は)ギリギリセーフといったところだろうなぁ」とのこと。


待合室で暫し、他の撮影者の方々とお話。
一昨日北近畿の車内で見たような方が居られたような気がして、一応聞いてみるとやっぱりビンゴ。土曜の朝に豊岡から餘部までタクシーを飛ばし、気合で出雲を撮影したとか。やはりですか。

他に居られたのはフリーの写真家さんとか、コンテスト入選を狙うオバチャンカメラマンとか。・・・この方々、昨晩は出雲を撮るために餘部で駅寝だったんですって。鉄ヲタでもないのに、すげぇ気合です。・・・あ、私も人の事云えないか。京都駅で徹夜してたよなぁ、そういや。


暖かい飲み物が恋しくなったとしても、40m下の下界まで滑りやすい道を降りて行かないと自動販売機などと云う便利なものはありません。ソロソロと細い雪道を降り、国道沿いの喫茶店前の自販機でカフェオレを調達。熱い缶が、凍りそうな頬を緩めます。


そんなこんなですぐに時間は経ち、次の列車まではあと30分ほど。お立ち台に上がる人は、まだそんなに多くありません。そのうちに段々とどこからか人が増え、最終的には15人ほど。機材はコンデジや写るんですからキャノン砲まで様々、けれども撮りたい気持ちは皆同じ。


露出OK、三脚大丈夫、傾きは許容範囲内、連写OK。


やがて、トンネルの奥から2筋の光が飛び出してきました。お立ち台に、一気に緊張が走ります。
暗い穴から抜け出し、一気に橋に躍り出てきた2両のディーゼルカー。谷を渡る風の音と橋を渡る列車の音にも負け無い勢いで、一斉にシャッターが切られました。

望遠、標準、広角と各自のセッティングしているレンズに応じてシャッターポイントが異なるのが面白いところです。私は海を多めに入れ、雪も入れて列車はいわば「借景」気味で。


これを撮れば、もうここに来れた甲斐があったというもの。思い残す事は無く、次の列車で餘部を後にします。実際は「思い残す事は無く」というのは激しく間違いで、ただ単に時間の都合でこうせざるを得なかっただけなんですけどね!


今撮影した列車から観光客と思しきかなりの人数が降りてきた様子で、山間の閑静なはずの駅は一気に賑わいを呈していました。普段の光景を知る者からすると、かなり異様な光景ではあります・・・。

何時の間にやら完全に観光スポット化してしまった餘部駅と鉄橋。やはり、ちょっと複雑な気分です。「静かなままにしておいてやって欲しい」というのは、贅沢な本音なのでしょうか。


そんなことを考えているうち、自動の接近放送が駅に鳴り響きます。やがて、浜坂側から2両編成のキハ47が雪を分けて到着。


・・・ってかさっきの観光客、全員この列車で折り返すんですか。何ですかそれは。

「観光」ってのは本来どういうものなのでしょうか・・・ということをお節介ながら少し考えてしまった、餘部での2時間余りでした。

どこかの旅行社の「カニバスツアー」に参加し、都会から快適な貸切バスで山陰へ乗りつけ、城崎温泉や香住といった拠点駅から数駅だけ田舎のローカル列車に乗ってこんな辺鄙な駅に来て、橋や海を見て「わー綺麗ー」「来て良かったねー」とありきたりな文句を口にし、記念撮影して10分少々でさっさと引き上げていく・・・そんなものが「観光」だとは、私は思えません。


煤けた煙を上げながら、ディーゼルカーは慎重に鉄橋を渡りきってトンネルの奥に姿を消していきます。その轟音が消えた後に残るのは、湾に打ち付ける波音と谷を渡る風音だけ。眼前に広がるのは、白化粧した山と鈍い色した海と、集落の瓦屋根。

この海と風と雪が織り成すモノトーンの景色だけは、橋が変わっても決して変わることはありません。


柴山で降り、あまりに雪景色が綺麗だったのでしばらく撮影。

去り行く列車の背後には、凍てついた真っ白な木々が。昨日までは葉を落として寒そうな姿を晒していたはずなのに、一晩で景色はこんなに変わるものです。



時刻表を見ると、どうやらあと10分ほどで香住行きの普通列車が、その15分後には「かにカニはまかぜ」が通過する様子。それじゃまだもうちょい粘ってから行こう、と考えてしまうのは鉄ヲタの性。寒さなんて何のその、時折強く吹く雪も苦になりません。全く、趣味というのはおかしなものです。


3連の香住行き普通列車の先頭には、山口から転属してきたキハ40がくっついていました。混色、いい感じです。もーちょっと露出+してもよかったなぁ、と・・・。


続いてはかにカニはまかぜ。後ろから3両目は、とうとう京キト最後の一両となってしまった国鉄色のキハ180です。


・・・因みにこの後、コイツが巻き上げた雪で体中真っ白けになったのは秘密。


<おまけ>

舞鶴道を120km/hで爆走する車内から

他意はありませんよ?きっと。